Azure OpenAI Service の概要と特徴

はじめに

Microsoft Azure の生成 AI プラットフォーム 「Azure OpenAI Service」 は、OpenAI モデルをエンタープライズグレードで提供し、セキュアな環境で大規模言語モデル(LLM)を活用できます。この記事では Azure OpenAI Service の概要からメリット・デメリット、具体的な使い方、さらにファインチューニング(上級者向け)までを詳しく解説します。自社システムへの組み込みや開発委託を検討している方は必見です。


概要

Azure OpenAI Service は、OpenAI の GPT‑4 シリーズや GPT‑4o、最新の GPT‑4.1(最大 100 万トークンのコンテキスト)、そして高度な推論に優れた o4‑mini / o3 モデル などを Azure 基盤で提供するマネージドサービスです。モデルのデプロイ、API キー管理、ネットワーク制限(VNet 統合やプライベートエンドポイント)を Azure ポータルから一貫して操作でき、企業要件に合わせた可観測性やガバナンスを実現します。 learn.microsoft.com


メリット・デメリット

メリット

  • セキュリティとコンプライアンス
    データは Azure リージョン内で保持され、Microsoft による SOC 2 Type II や ISO 27001 など多数の認証に準拠。
  • ネットワーク分離
    VNet 統合・プライベートエンドポイントで社内システムと閉域接続が可能。
  • SLA とサポート
    企業向け SLA(99.9 %)と Microsoft サポートプランで商用利用を支援。
  • スケーラビリティ
    API ベースで自動スケール。リクエスト上限はリージョン/モデルごとに最大 1 M TPM(GPT‑4.1 Default)など高めに設定。

デメリット

  • 利用申請が必須
    OpenAI API とは異なり、まず Microsoft の利用申請(Azure Form)を通過する必要がある。
  • プレビュー機能の変動
    GPT‑4.5 Preview などは将来バージョンアップ時に API 互換性が変わる可能性がある。
  • コスト構造が複雑
    プロビジョニングスループット(PTU)・従量課金・ファインチューニングのホスティング料金など、多層的な価格設定となる。

具体的な利用方法

1. リソースの作成

  1. Azure Portal「Azure OpenAI」 リソースを追加
  2. リージョンを選択(例:東日本 / 米国東部)
  3. ロールベースアクセス制御 (RBAC) で Cognitive Services OpenAI User 権限を付与

2. モデルのデプロイ

  • GPT‑4o、GPT‑4.1、o4‑mini などから選択
  • Standard デプロイ(従量課金)と Provisioned PTU(固定スループット)を選択可能
  • 名前(deployment ID)と最大トークン長を設定

3. API 呼び出し





curl https://{resource-name}.openai.azure.com/openai/deployments/{deployment-id}/chat/completions?api-version=2025-03-01-preview \
 -H "api-key: ${AZURE_OPENAI_KEY}" \
 -H "Content-Type: application/json" \
 -d '{
   "messages":[
     {"role":"system","content":"You are an assistant"},
     {"role":"user","content":"Azure OpenAI で何ができる?"}
   ],
   "max_tokens":512
 }'

推奨 SDK

  • Python: openai
  • JavaScript: @azure/openai
  • .NET: Azure.AI.OpenAI
    最新版 SDK では、これらの言語全てで GPT‑4o のマルチモーダル入力(画像+テキスト)に対応。

4. ネットワーク & セキュリティ

  • VNet 統合で IP 制限
  • プライベートリンクを使用し、社内サブネットのみ公開
  • Managed Identity でキー不要の認証

5. コスト最適化

  • 開発段階では Standard 従量課金
  • 大規模利用(例: 数十〜数百万 TPM) で試算し、従量課金より 30 % 以上安くなる場合 PTU を検討
  • ロギング/メトリクスは Azure Monitor へ送信し、コスト異常をアラート設定

ユースケース

分類具体例効果
業務効率化FAQ チャットボット、社内ナレッジ検索問い合わせ削減、情報共有最適化
コンテンツ生成マーケティング記事、SNS 投稿制作時間 70 % 削減
コード支援Pull Request の自動レビュー品質向上、レビューコスト削減
音声 AIGPT‑4o Audio による自動文字起こし会議録作成を自動化
企業システム統合ERP/CRM と連携し要約・レポート自動作成業務フロー短縮

ファインチューニング(上級者向け)

対応モデル

  • gpt‑35‑turbo(1106 / 0125)
  • gpt‑4o(2024‑08‑06)
  • gpt‑4o‑mini(2024‑07‑18)

料金イメージ(GPT‑4o)

項目単価備考
トレーニング$0.025 / 1K tokensLoRA 採用で高速
ホスティング$1.70 / 時間デプロイ中は常時発生
推論入力 $0.00275 / 1K tokens
出力 $0.011 / 1K tokens
通常の API 課金と同様

手順概要

  1. データ準備
    • JSONL 形式で messages 配列を作成(Chat Completion 形式)。
  2. Azure AI Foundry PortalCreate custom model を実行
  3. 学習後に カスタムモデル をデプロイ
  4. SDK から deployment_id を切り替えるだけで推論が可能

ファインチューニングの注意点

  • コスト管理
    デプロイを停止しても カスタムモデルが残存 すると課金対象外だが、再デプロイには再度ホスティング課金が発生。
  • バージョンリタイア
    ベースモデルの廃止日に合わせ、ファインチューニングモデルも使用不可になるため、定期的な再学習が必要(例:gpt‑35‑turbo‑16k‑0613 は 2025‑04‑30 でリタイア予定)。
  • データプライバシー
    機微情報は匿名化 or 変換して学習。暗号化ストレージ帯域の SFTP アップロードを推奨。
  • ガバナンス
    max_tokens内容フィルタ API を組み合わせ、出力制御を行う。

まとめ

Azure OpenAI Service は、セキュアかつスケーラブルに LLM を利用できるマネージド基盤 です。

  • Azure 構築 の専門ベンダーとして、安全なネットワーク設計・コスト最適化・ガバナンス実装までワンストップで支援可能
  • GPT‑4o Audio や o‑series 推論モデルなど最新機能を迅速に商用導入
  • ファインチューニングにより自社データで精度を最大化し、業務プロセスを革新

ご相談はお気軽に! Azure OpenAI Service の導入・PoC やシステム開発の外注先をお探しの場合は、ぜひ弊社までお問い合わせください。


弊社のご紹介

弊社ではAzure構築・導入支援サービスを提供しております。

マイクロソフト出身、 Azure 認定資格を保持するエンジニアが Azure に関するアドバイスや、環境構築などのご支援をいたします。

200を超えるAzureのサービスの中から、どのようなサービスを利用すれば良いのか、どういう組み合わせで利用できるのか、ランニングコストはどれくらいかかるのかなど、様々な角度から生じるお客様の疑問にお答えし、弊社にて Azure 環境の構築や Azure の導入をサポートします。

Azure をより活用し、最適な構成を構築するご支援をいたしますので、ご検討の方はお気軽にお問い合わせください。


参考情報

  • Azure OpenAI 「What’s new?」 (2025‑04‑16) learn.microsoft.com
  • Azure OpenAI Service Quotas & Limits (2025‑04‑16)
  • Fine‑Tuning Price (Microsoft Q&A)
  • モデル一覧 (2025‑04‑16)
  • モデルリタイア予定 (2025‑04‑16)

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